環境規制「RoHS指令」とは?マーキングフィルムの基礎雑学 ~「Viewcal 900シリーズ」のRoHS規制対象10物質の不使用証明書発行について。~
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- 5月14日
- 読了時間: 5分
更新日:5月15日

皆さんは「RoHS指令」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?「RoHS」は「ローズ」または「ロース」と読み、難しそうに感じてしまう名前ですが、みなさんの生活にとって非常に身近なものになります。
これは、AC1000V/DC1500V以下の電気・電子機器等に含まれる特定有害物質の使用を制限するEU(欧州連合)の環境規制に関する法令です。製品の安全性や環境保護のため、EUやEUと取引のある国などで採用されています。
何が対象となり、対象とならないかなど複雑なカテゴリー分けがあるのですが、EUへ輸出する電気・電子機器に貼るステッカー用途のマーキングフィルムについても、この規制が適用される場合に『規制物質の不使用証明書を発行出来るか?』というご相談をいただきます。
今回はマーキングフィルムを扱う上で覚えておきたい(RoHS指令)について解説していきます。
目次
1.RoHS指令とは?
RoHSは「Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment(電気・電子機器における特定有害物質の使用制限)」の略称で、もともとは2002年に成立、2006年に施行されたRoHS指令(通称RoHS1)によってスタートしました。このRoHS1では、下記の6物質が対象とされ、電気・電子機器への含有が厳しく制限されました。
規制対象の6物質
カドミウム(Pb)
鉛(Hg)
水銀(Hg)
六価クロム(Cr6+)
ポリ臭化ビフェニル(PBB)
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)
追加された規制対象の4物質
その後、2011年成立、2013年に施行されたのが改正RoHS指令(通称RoHS2)です。RoHS2では、規制対象製品の範囲が広がったほか、適合性評価やCEマーキングとの関連も明確化されました。そして2019年の改正では、下記のフタル酸エステル類4物質が追加され、現在は合計10物質が規制対象となっています。
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)
フタル酸ブチルベンジル(BBP)
フタル酸ジブチル(DBP)
フタル酸ジイソブチル(DIBP)
フタル酸エステル類は樹脂の硬さを調整するための可塑剤の一種として、広く使用されています。一部のフタル酸エステル類は生殖毒性や発がん性など、人への有害性が懸念されています。
2.RoHS指令で規制されている物質一覧
最大許容濃度の単位について
・wt%(重量パーセント):物質の重量における含有量を示す単位。
・ppm(百万分率):100万分の1の割合を示す単位。
(例)100g中0.1gの含有量=0.1wt%=1000ppm
※RoHS指令では、技術的に代替が不可能な場合や環境・健康への影響を考慮して、特定の物質や用途に対して適用除外が認められることがあります。
例をあげると、鉛を含む銅合金や電気電子部品のガラス中の鉛、蛍光灯の中の水銀などがあります。しかし、適用除外の条件は定期的に見直されているため、これらの材料も将来的に適用除外でなくなる可能性があります。RoHS指令の適用除外については、最新情報を確認することが重要となります。
3.RoHS指令で規制されている対象10物質の閾値(しきいち)以下のマーキングフィルム
Viewcal(ビューカル)900シリーズ
弊社のマーキングフィルム「Viewcal 900シリーズ」には、RoHS規制物質の意図的な使用はありません。また、定められた閾値以下です。※着色に使用している顔料により、一部例外があります。
そのため、電子・電気機器へのステッカー用途などにもご使用いただけます。
マーキングフィルムを選ぶにあたり、耐候性や作業性だけでなく、時にはRoHS指令が定める規制対象10物質が閾値以下か求められる場面があるかもしれません。その時の為に、今回の情報を日ごろから頭の隅に留めていても損はないと思います。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか?調べれば調べるほど難解になるRoHS指令ですが、要点として
① EUが制定した環境規制で、EUやEUと取引のある国などで採用されている。
② 特定有害物質として10物質が規制対象となっている。(2025年5月時点)
この2点を抑えておいていただければと思います。
RoHS指令は、環境と人を守るためにEUが定めた法令です。「RoHS指令という言葉を耳にしたけど、よく分からない」
「RoHSについての概要を知りたい」そんな疑問をお持ちの方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
また、今回ご紹介した「Viewcal 900シリーズ」についてもっと知りたい方は、下記のマーキングフィルムサイトや関連コラムをご覧ください。
日本国内においてRoHS規制物質に対する不使用証明書の発行は、法令上義務化されていませんが、お客様に安心して製品をご使用いただけるよう、できる限り不使用証明書の発行に協力させていただきます。
証明書や導入のご検討、そのほか商品についてのご相談は、下記のお問い合わせフォームよりお問合せください。
※不使用証明書は副資材を除く製品の原材料情報を基として発行しています。
※「Viewcal 880シリーズ」も一部不使用証明書の発行が可能な場合があります。
※不使用証明書は製造元のリンテック株式会社発行のものとなります。(宛先の変更はできません)。
参考サイト
※JETRO:RoHS(特定有害物質使用制限)指令の概要:EU
※中小企業基盤整備機構:RoHS指令の概要-RoHS指令の基礎
※EC環境総局:RoHS指令関連ページ
※東京都立産業技術センター:FAQ「RoSH指令一覧」
執筆者紹介
葉山和裕
2005年 桜井株式会社に入社。2021年に開設した自社ECサイト「SAKURAI Directshop」の立ち上げからサイト運営に関わる。